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講師に「訊く」
「実践・経営戦略入門」
『社員が戦略を語れない会社に未来はない! 』
講師:西村克己氏
(芝浦工業大学大学院客員教授)
西村先生は、数多くの企業で経営改革のコンサルティングをなさっているそうですね。日本企業の経営戦略についてどのようにお感じですか?
戦略なき戦術を展開しているのが日本の現状だと思います。いかなる優れた戦術でも、戦略には勝てません。羊飼いにたとえると、米国や戦略は「羊飼いの犬」です。わずかな犬が、何百頭の羊を手玉にとるように羊を誘導します。一方、日本や戦術は「羊」です。足下しか見ないで走るため、犬にうまく誘導されて檻の中。最後は体中の毛を刈り取られて、それでも笑っています。
なかなか手厳しいですね。戦略と戦術を取り違えてしまっているということでしょうか。
そうですね。例えば、日本では知名度とブランド力を同じものだと考えている人が非常に多いのですが、全く別物です。知名度は知っているというだけ。企業名や製品を知っていても、買いたいかどうかは別物です。買いたい、所有したいというのがブランド力です。いくら会社名や製品名を高い広告費をかけて宣伝しても、知名度は上がりますが、ブランド力は高まりません。ブランドというのは戦略を考える上でも大切なポイントなのですが、そこを履き違えてしまっている。一生懸命、知名度向上のための戦術を繰り返しても、効果は出ません。
なるほど。経営には「戦略」が必要ということですね?
日本の経営者は、「経営戦略」と「経営革新」を混同しています。経営革新はあくまでオペレーションの効率化です。経営戦略のほんの一部に過ぎません。たとえばサプライチェーンマネジメントやキャッシュフロー経営などは、経営革新ですが、重点施策の1つに過ぎないのです。経営戦略は、企業独自のブランドやドメインを強固にするために、企業が進むべき道を決めることです。経営戦略の中に経営革新がある。経営革新だけでは、経営戦略とはいえないのです。
経営戦略を、計数計画(売上利益計画)と勘違いしている経営者も多くいます。鉛筆をなめて計数計画を立てて、あとは「みんながんばりなさい」。これくらいなら、新入社員だってできます。計数計画は重要ですが、経営戦略のほんの一部にしかすぎないのです。
経営戦略を学ぶ目的は何だとお考えですか?
今までは大量生産・大量販売のビジネスモデル(もうけのしくみ)が日本企業全部にあてはまりました。規模の拡大が、モノ不足を背景とした右肩上がりの経済を背景として、全ての企業が勝てました。しかし現在は大量生産・大量販売のビジネスモデルが崩壊しています。つまり、企業各社が、「独自のビジネスモデル」を構築しなければ、勝てなくなったのです。もう努力だけでは勝てない、体力勝負だけでは勝てない時代です。努力を成果につなげるためには、経営戦略が不可欠なのです。
この講座はどのような方に受講していただきたいですか?
ズバリ、最大の優先順位は経営者です。まず経営者が、今までのやり方ではよくならないことを自己認識して頂くために受講して頂きたい。あなたの会社の経営戦略を語る時、経営理念、ドメイン、KFS、ビジネスモデル、コアコンピタンス、基本戦略、機能別戦略などを社員に語れるでしょうか。もし語れないとしたら、あなたの会社には経営戦略がありません。もちろん、社員は全く経営戦略を理解していないでしょう。まずトップが戦略を持たなければいけません。
次に迷える管理職たちです。戦略がない会社に若手社員は魅力を感じません。なぜソニーやトヨタ自動車などは就職ランキングが高いのでしょうか。それは戦略の有無の差なのです。経営戦略が明確でない会社に、社員は夢や将来性をもてません。戦略がない会社では、日々の経営活動に疲弊していきます。何のために努力するのか、どういう方向で努力するのかを示さなければ成果が上がらない時代です。
最後は全社員です。全社一丸となるためにも、経営戦略を習得して、実務で活用してください。織田信長の「天下布武」はまさに経営戦略でいう「ビジョン」です。不平不満はあっても、天下布武によって部下たちは一丸となって困難な仕事も自ら買って出ました。今会社が全社一丸となれなければ、消耗戦による疲弊が増えるばかりです。経営者や管理職の方針を理解するためには、全社員が経営戦略を理解しておくことが必要なのです。
最後に受講者の皆様へのメッセージをお願いします!
「戦略を語れる会社は、不況でも成長している」ということを肝に銘じなければなりません。「戦略を語れる会社は負けない会社」でもあります。全社員に経営戦略の知識を身につけさせ、戦略を語れる会社にしてください。